2011年10月11日

金原ひとみ・・・奴隷状態の私たち(原発推進の内なる空気)


 『蛇にピアス』を書いて、芥川賞をとってから、何年になるのでしょうか?

かなり気持ち悪い若者の世界が描かれていて、衝撃的でした。ついていけない。

あれ以来、芥川賞をとった小説をあまり読まなくなったような気がするくらい。

でも、最近彼女が書いた『マザーズ』の評価は高いようで、あちこちで書評を

目にします。現代社会で、母親になることの孤独と辛さを身体感覚に訴える書

き方で描いていてすごいというのです。一度読んで見なければと思っていました。

 『蛇にピアス』の世界と、結婚とか、母親になるという言葉は何の接点もない

ような気がしていましたから・・・。

 

 すると、今日10月11日の中日の夕刊に、「制御されている私たちー原発

推進の内なる空気」という題で、彼女の文章が載っていました。


 4月に第2子出産予定で、入院の準備をしているとき地震が起き、3月12

日、福島第1原発で「水素爆発がおきた3時間後、私は娘の手を引き夫と3人

で岡山に向かった。あの日、私の見据えていた未来は消えた。」4月に岡山で

娘を出産し、夫と離れて暮らし、東京に戻りたくはない。


 そして彼女は、はっきりといいます。

「原発はすぐにでも全炉停止した方がいい。二度とこんなことは起こってほし

くないし、今回の件で、今や1部の利権のためだけに原発があることが、周知

の事実となったからだ。(略)こういう誰にでも分かるはずのことができない

のは、政府や東電の社員が悪人だったり、無能だからではないのだろう。反原

発の総理大臣にも、原発推進の流れは変えられなかった。(略)数万人がデモ

を起こしても、デモに行かなかったその何百倍、何千倍もの人々が願っていて

も、変わらないままだ。

 既に放射能の危険性を考えなくなった人は多い。何もできないのが分かって

いれば、余計に辛いだけだからだ。命より大切なものはないと言うが、失業を

理由に自殺する人が多いとされるこの国で、失業を理由に逃げられない人、人

事が恐くて何もできない人がいることは不思議ではない。


 しかし多くの人が癌で死ぬ可能性よりも、個々の人間とは無関係、無慈悲に

動いていくこの社会に対して、私たちが何もできないことの方が、余程絶望的

なのかもしれないのでだ。

 私たちは原発を制御できないのではない。私たちが原発を含めた何かに、制

御されているのだ。人事への恐怖から空気を読み、その空気を共にする仲間達

と作り上げた現実に囚われた人々には、もはや抵抗することはできないのだ。

しかしそれができないのだとしたら、私たちは奴隷以外の何者でもない。それ

は主人すらいない奴隷である」。


 金原ひとみは、1983年生まれというから、今、28歳。2児の母親。

何という絶望の深さでしょう。「何もできない。抵抗することができない。

奴隷である私たち」という認識。若者を覆う閉塞感はこんなところにあるのか

もしれません。

 しかし、今回の原発問題で、少しずつ何かが動き始めたような気もしていま

す。今までなかなか接点が見つからなかった、若者と老人が手をつなぎ始めた。

特に若い母親達が、行動を始めた。マスコミも、特に中日新聞は、本気で脱原

発の報道をやっていると思います。私も、今まではとても付き合えなかった金原

さんの発言に、共感を覚え、「絶望せずに一緒にやっていこうよ」とエールを

送る気持ちで一杯です。

    幸

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